死亡慰謝料について

交通事故に遭って不幸にも死亡されてしまった場合、そのご遺族の方が死亡慰謝料を請求することができます。
その金額については、3つの基準があります。それは、自賠責保険の基準、保険会社の任意基準、裁判基準です。このうち、金額が最も高いのは裁判基準であり、最も低いのは自賠責基準です。
自賠責基準は、こちらをご覧ください。例えば、亡くなられた被害者にフルタイムで共働きの妻と小学生の子ども1人がいた場合、被害者の慰謝料350万円+遺族2人分の慰謝料650万円+子どもが被扶養者であることによる加算額200万円=1200万円が慰謝料として認められることになります。
裁判基準では、亡くなった方が、ご家族を扶養する立場にあるかなどによって金額が変わることになっており、具体的には以下のとおりとされています。
・一家の支柱  2800万円
・母親、配偶者 2400万円
・その他    2000万円~2200万円
(参照:損害賠償額算定基準平成24年版(赤い本)財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部)
ですが、実際の裁判では、上記の基準と同一とは限らず、上記の基準は目安に過ぎません。そこで、実際の裁判例で認められた具体的金額をご紹介したいと思います。

裁判例1 一家の支柱の場合

高齢の親を扶養していた大学教授(58歳男性)が死亡した場合について、本人の慰謝料2400万円、母親・妹・2人の弟の4人に合計600万円の近親者固有の慰謝料を認め、合計3000万円の慰謝料を認めたものです(大阪地裁判決平成12年9月21日)。加害者からはアルコール分が検出し、業務上過失致死罪で禁固1年6月の有罪判決が出されていた事案であり、そのような悪質性が考慮された結果、上記基準より高額となったものと思われます。

裁判例2 一家の支柱の場合

会社員(40歳男性)が死亡した場合について、本人の慰謝料2000万円、妻・2人の子どもに合計800万円の固有の慰謝料を認め、合計2800万円の慰謝料を認めたものです(大阪地裁判決平成12年9月27日)。上記基準と同額であり、目安どおりの判決といえると思います。

裁判例3 母親・配偶者の場合

主婦(60歳女性)が死亡した場合について、本人の慰謝料2200万円、夫と5人の子どもに合計700万円の固有の慰謝料を認め、合計2900万円の慰謝料を認めたものです(東京高裁判決平成20年7月24日)。 上記基準を500万円上回り、一家の支柱の基準も上回っています。子どもが5人と比較的多数いて、1人100万円の慰謝料が認められたことが、高い金額が認められた一因と思われます。

裁判例4 その他の場合

小学生(7歳女児)が死亡した場合について、本人の慰謝料2000万円、父親・母親・弟に合計530万円の固有の慰謝料を認め、合計2530万円の慰謝料を認めたものです(東京地裁判決平成19年12月17日)。上記基準を上回っています。近親者固有の慰謝料の内訳は、父親200万円、母親250万円、弟80万円となっており、母親が父親より金額が高く評価されています。母親の精神的ショックが大きいと認められたのだと思いますが、父親と母親の慰謝料金額は同額の方が多く、異なる場合は比較的珍しいと思います。まだ幼い年頃だったことが影響したのかもしれません。

裁判例5 その他の場合

大学生(20歳女性)が死亡した場合について、本人の慰謝料2200万円、父親・母親に合計400万円の固有の慰謝料を認め、合計2600万円の慰謝料を認めたものです(札幌高裁判決平成18年8月25日)。上記基準を上回っています。近親者固有の慰謝料は、父親と母親は同額の各200万円です。これから社会に羽ばたいていくという時期だけに、金額が上記基準より高く認められたのではないかと思います。

裁判例6 その他の場合

パート労働者(50歳女性)が死亡した場合について、本人の慰謝料2200万円が認められたものです(名古屋地裁判決平成16年7月7日)。上記基準の範囲に含まれています。近親者固有の慰謝料が認められていませんので、ご遺族に、両親・子ども・配偶者がいなかったことが推測されますが、実際は夫と3人の子どもがいた事案であり、裁判上の請求として本人の慰謝料しか請求しなかっただけのようです。しかも、請求金額が2200万円でした。近親者固有の慰謝料を請求してもしなくても慰謝料の総額は変わらないと一般的に言われていますが、請求して入れば変わっていた可能性は全くゼロではないように思われます。

最後に

以上のように、比較的高額の慰謝料が認められた事案ばかり紹介しました。慰謝料は個別の状況によって変わりますので、同じ家族構成だからといって、同じ金額が認められるとは限りません。
また、加害者の保険会社は、上記のような金額を最初から提示することはなく、上記のような金額を一般の方がご自身だけで交渉して得ることは、まず困難です。
専門家の弁護士とよくご相談していただくのが良いと思います。
横浜ロード事務所は、交通事故のご相談を無料で受け付けていますので、お気軽にご相談ください。