危険運転致死傷罪とは、危険な自動車の運転によって、人を死亡または負傷させた場合に成立する犯罪です。刑法208条の2に規定されており、死亡させてしまったときは1年以上20年以下の懲役、負傷させてしまったときは15年以下の懲役となります。罰金刑はありません。
危険な自動車の運転の具体的内容については、以下のいずれかの要件に該当する必要があります。
①アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させたこと
②進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させたこと
③進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させたこと
④人または車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人または車に著しく接
近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転したこと
⑤赤色信号またはこれに相当する信号をことさらに無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を
運転したこと
危険運転致死傷罪は、特に、飲酒運転や無免許運転の被害者のご遺族が中心となって、極めて危険で無謀な運転により無惨にも生命が失われた場合にも業務上過失致死傷罪で5年以下の懲役などにしかならないことに対する問題提起がなされ、社会的関心が強くなって、多数の署名などが集まった結果、平成13年に新設されたものです。
新設当時は、死亡させた場合に1年以上15年以下の懲役、負傷させた場合に10年以下の懲役でしたが、刑罰が軽いとの批判があり、平成17年改正により現在の刑罰に引き上げられました。
また、新設当時には、四輪以上の自動車の運転の場合に限定されていましたが、平成19年改正により単に自動車となり、自動二輪車なども含むことになりました。
危険運転致死傷罪に該当しない場合についても、平成19年改正により自動車運転過失致死傷罪が新設され、業務上過失致死傷罪より重い7年以下の懲役などの刑罰が科されることになっています。
危険運転致死傷罪については、その要件が厳格であり、また立証が困難な場合があるなどの批判があり、要件を拡張すべきという議論があります。