共同不法行為

共同不法行為とは、複数の者が共同の不法行為によって他人に損害を与えることをいいます(民法719条1項前段)。
ただし、これは狭義の不法行為と言われており、民法の規定上の共同不法行為としては、この狭義の不法行為以外に、共同行為者のうち誰の行為が損害を与えたか分からない場合も共同不法行為として取り扱われています(民法719条1項後段)。
また、不法行為者に対して教唆(そそのかすこと)した者、不法行為者を幇助(手伝うこと)した者も、共同不法行為と同様の取扱いをすることになっています(民法719条2項)。

交通事故で問題になるのは、狭義の不法行為だと思います。
例えば、自動車がスピード出し過ぎで直進し、対向車のバイクが前方不注視で右折しようとしたところ、両車が衝突し、飛ばされたバイクが歩行者にぶつかって歩行者が重傷を負った場合、自動車の運転手とバイクの運転手が共同不法行為になります。
共同不法行為が認められるためには、行為者があらかじめ共謀をすることは必要なく、各行為が客観的に関連共同してれば良いというのが判例の見解と言われています。

共同不法行為と認められると、共同不法行為者は、被害者に対して、連帯して損害賠償する義務を負います。つまり、先ほどの例で、自動車の運転手もバイクの運転手も被害者の歩行者から請求されれば、全損害を賠償しなければならず、被害者の損害の半分だけを支払うというだけでは足らなくなります。被害者は、どちらの運転手に全額請求しても構いません。ただし、両者からそれぞれ全損害の賠償を受けて2倍の賠償を受けることはできず、あくまで生じた損害の賠償を受けるだけではあります。
それでも、被害者にとっては、両方に対して請求できることから、いずれか支払ってもらえそうな者を選択することができる分、損害賠償を受けやすくなります。
共同不法行為者が連帯して負う責任については、判例上、不真正連帯債務と言われています。民法上の連帯債務(真正連帯債務)の場合には、連帯債務者の1名の債務を免除すると、免除していない他の連帯債務者の債務が減額される(民法437条)などの影響が生じますが、不真正連帯債務にはそのような影響が原則なく、損害の賠償など(広義の債務の弁済)でないかぎり他の不真正連帯債務者に影響が生じないものです。

 仮に、先ほどの例で、自動車の運転手が被害者の歩行者に対してその損害全額を賠償した場合、自動車の運転手はバイクの運転手に対して被害者の損害全額のうち一部を支払うよう請求することができます。
これを求償といいます。
求償できるのは、共同不法行為者の過失割合に応じた金額になります。例えば、自動車とバイクの過失割合が4:6であった場合、バイクの運転手に対して、被害者の損害の6割を求償できることになります。
もし、自動車の運転手が被害者の損害の5割を支払っただけの場合、自分の過失割合4割を超えた分である1割をバイクの運転手に対して求償することができます。