損益相殺とは、不法行為などの被害者が、損害賠償額の算定に関し、損害を被った原因と同一の原因によって利益を受けた場合に、その利益の金額を損害賠償額から控除することです。
不法行為について規定している民法において、損益相殺が明確に規定されているわけではありませんが、判例・学説において、当然の法理として認められています。
交通事故において、生命保険金や社会保険給付(労災保険や遺族年金など)が被害者や遺族に対して支払われた場合に、それら保険金などが損害賠償額から控除されるか問題になります。
裁判例としては、個々の保険金や社会保険給付の性質から、損益相殺の対象になるものとならないものを区別しています。
損益相殺の対象になるかどうかについては、Q&Aにおいて、説明します。
また、損益相殺とは違いますが、傷害保険などの損害保険について、損害保険会社が被害者に対して損害保険金を支払った場合に、その支払われた損害保険金の限度で、損害保険会社が被害者の加害者に対する損害賠償請求権を取得するという保険代位(保険者代位ともいいます)という制度があります。この保険代位は、保険法25条で認められており、損害保険の約款においても規定されていることが多いです。
この保険代位によって、結局、支払われた保険金の分を被害者は請求できなくなるわけですから、被害者にとってjは損益相殺と同様の結果になると思われます。