交通事故で死亡した夫が生命保険に加入していた場合、損害賠償額は減額されるのですか。

ご主人が死亡されたことによって多額の生命保険金が支払われたとしても、その生命保険金は損害賠償額から控除されることはありませんので、減額されません。

法律上関係する問題として、損益相殺(そんえきそうさい)と言われる問題があります。
損益相殺とは、不法行為の被害者が、損害を被ったのと同じ原因によって利益を受けた場合に、公平の見地から、その利益の額を賠償額から控除することをいいます。
損益相殺については、法律上明記されているわけではありませんが、判例で認められています。

生命保険金が、この損益相殺の対象になるかどうかが問題になりますが、最高裁判決昭和39年9月25日(判例タイムズ168号94頁)は、「生命保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払わるべきものであるから、たまたま本件事故のように不法行為により被保険者が死亡したためにその相続人たる被上告人両名に保険金の給付がされたとしても、これを不法行為による損害賠償額から控除すべきいわれはないと解するのが相当である。」と判示し、つまり、生命保険金は損益相殺の対象にならないと結論づけました。